海外在住で子供に日本語教育をする日本人の親はとても大変。実はバイリンガル子育ては年齢別に注意が必要です。
カエデはバイリンガル教育を勉強しながら、カナダで2人の子どもを日英仏語で読み書きまでできる高度トリリンガルに育てました。そして、駐在や永住家庭など、たくさんの家庭のバイリンガル教育を見てきました。
私には、海外でバイリンガル子育てをしているママやパパ達が、今後ぶつかるであろう問題を予想できます。
では、年代別にどんなところに注意したらよいのか、戸惑う前にお教えします!
この記事は以下の人向けに書きました。
- 国際結婚家庭
- 海外在住日本人家庭
- 駐在家庭
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山がいくつも待っている
海外でバイリンガル子育てやマルチリンガル教育を続けていると、子供が成長するにつれ山をいくつも超えていくことになります。
なるべくママやパパを怖がらせないようにとは思うのですが、これ本当なんです!
特に日本語はヨーロッパ系言語と文法や表記法もまったく違い、漢字の存在が最大のネック。英語話者にとって、日本語は最も習得が難しい言語なんです。
世界中に散らばっている中国系やインド系移民の人達と比べ、海外の日本人コミュニティはとても小さいため日本語を使う人が少く、せっかく日本語を勉強しても使う場所がないので、子供達のモチベーションが上がりません。
海外でのバイリンガル子育てには、本当に次から次へと試練がやってきます。でも、どんな問題が起こるのか予想できているのとそうでないのとでは、心の準備が違ってくると思いますよ。
では進めましょう!
親子の絆を結ぶ乳幼児時代
【1人1言語の原則】
この年代は親がしっかり自分の母語(日本語)で語りかけ、赤ちゃんに言葉の基礎を教え、親子の絆を強めましょう。
母語での読み聞かせは0歳から始めます。赤ちゃんは親の声をじっと聴いて話す準備をしています。パトリシア・クール博士は0歳児の赤ちゃんへの語りかけはCDやDVDでなく、親の生の声でないと言葉を育てる効果がないと言っています。
追記:語りかけとかけ流しは別物と考えてください。0歳児の赤ちゃんへの語りかけは人間の生の声でないと効果は少ないですが、外国語のCDかけ流しは効果はあり、正しい音がインプットされていきます。
日本語基礎をしっかり幼稚園時代
【できれば日本語保育園】
3歳くらいになると保育園や幼稚園に通わせると思いますが、できれば日本語で保育をしてくれるところをお勧めします。というのは、まわりは現地語の海に囲まれているのでそれくらいしないと太刀打ちできないのです。
現地語が遅れるんじゃないかという心配は、後に現地の幼稚園や小学校に通い始めたら吹っ飛びます。心配しなくても現地語は子供達の第1言語になります。
しかし、幼稚園時代で海外に出た場合、いきなり現地の保育園や幼稚園に放り込むのは厳禁です。「子供は言葉をすぐに覚えるは迷信」です!下手をすると子供が壊れます。詳しく知りたい人はこちらの記事をどうぞ。
海外赴任や移住などで幼稚園児を海外に連れ出す時は、子供の言葉の発達に十分注意しましょう。幼児は大事な母語がまだ確立していません。何歳から何歳までが危ないのでしょうか。 日本企業の海外活動に伴って、子供を連れて海外赴任する家族は多いです[…]
もしそれまで現地語に触れる機会が全くなかったのであれば、現地図書館の幼児教室などに顔を出して現地語に慣らし、最低限自分の欲求や感情を表現できるようにしてからにしましょう。
【実は幼稚園時代の日本語の基礎が一番大事】
また、まだ小さいからと安心せず、この年代で日本語が使えるようにしておかないと、補習校や日本語学校の小学部に入れたいと希望しても入学が難しくなるかもしれません。(これも本当です!)
特に共働き家庭は要注意です。我が家も共働きで、娘が3歳、息子が1歳で私が仕事復帰。朝早くから夕方まで長時間保育園に預けることになるので、親に代わって日本語教育をしてくれる場所が必要でした。そのため、日本語保育園に入れました。
そのころ我が家の子供達の言語環境は、保育園では日本語、家庭ではカナダ人の父親とは英語、私とは日本語、そして家の外では英語という、たいへんバランスの取れた日英語バイリンガル環境でした。
このころは姉弟同士では100%日本語で話し、日本語でごっこ遊びをしていたんですよ!
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現地校入学は日本語後退の危機
【現地校入学が最初の山場】
現地校の幼稚園や小学校へ入学した途端第一の山場が来ます。
我が家の子供達と同じころに日本語保育園を卒園した子供達にも、次々と日本語の後退や消失がありました。
それをいかに食い止めるかが最大の問題。とにかく日本語の接触量を増やしましょう。放課後や土曜日の日本語学校で読み書きを教えないと、日本語保持は難しくなるでしょう。
共働きである私達夫婦の最大の挑戦がここでした。そして試行錯誤の上、現地校幼稚園までお迎えに行き、子供達を日本語保育園の午後の部に送り届けてくれるドライバーを雇いました。またこのドライバー選びが難問でした。
その結果かろうじて娘は8歳、息子は6歳まで日本語保育(娘は学童保育)を続けることができました。
バイリンガルの9歳はとても大事
【9歳までに第一言語をしっかり確立】
8~9歳までは言葉そのものの土台を作る言語形成期の前半です。
子供は9歳頃までに母語が確立し、読み書きもでき、また自分にとって居心地の良い母文化も確立します。
この年齢以降に新しく接する言葉や文化には違和感を感じることになります。我が家の子供達は日英語2つの母語を持ち、日加2つのバイカルチャーで育ちました。
この年齢までに最低1つでも子供が一番使いやすい言葉が確立していないと、その後の言葉そのものの発達に影響が出るでしょう。幼い子供を連れて住む国や言葉が変わる状況の場合は注意が必要です。
母語での言葉の基礎力がないと、第2言語の習得は難しくなりますし、学習に影響が出ます。
また、この年齢まで日本語教育を続けて読み書きの基礎ができると、その後の日本語の保持が初めて可能になります。読み書きの基礎がないと言葉は安定しません。
【9歳の壁はバイリンガル子育ても同じ】
一般にいう9歳の壁はバイリンガル教育にも当てはまります。
日本語教科書にたくさん漢語(または2字熟語)が出てくるのも4年生からです。息子が4年生の時は本当に悩みました。
補習校で駐在家庭の子供達と同じ教室の場合、日本語に差が出てくるのが9歳以降。
また、使う日本語の教科書のレベルが低いと(例えば4年生なのに1年生の教科書を使うなど)、子供の実年齢と教える日本語の内容がアンバランスになるのもこの年代からです。
日本語を止めていくのもこの年齢からです。海外定住の子供の日本語の遅れは仕方のないことなので、この事実を受け止め、最低限子供が補習校や日本語学校を楽しめる日本語力を保持しましょう。
「9歳の壁」はバイリンガルの分かれ道。英語教育のピークを迎える臨界期や海外での日本語教育など、バイリンガル教育に色々な意味で影響を及ぼします。 9歳は体や心が変化しだす年齢です。外国語を習得する能力も下がり始め、学校での学習もだんだん[…]
会話力と学習言語力は違う
【会話言語と学習言語は違う】
よく勘違いされるのが、言葉が苦労なく話せると学習も問題ないと思われることです。家族内で使う日本語会話と、社会や理科などの学習言語は別物です。
また、自分の日本語が幼いと感じると、家族以外の日本人の大人と話したがらなくなるので、余計日本語が伸びなくなります。
私は子供が小さい時からできるだけ日本人の集まりに連れて行き、大人の会話に子供も入るように促していました。そうすると日本人コミュニティの中に知り合いができて、自分からも話しかけていけるようになりました。
家庭内に現地語のネイティブスピーカーがいないことの影響が、勉強の難しくなる9歳以降に現れるからです。
それでも、母語である日本語がしっかりしてさえいれば、現地語での読書量を増やしたり家庭教師をつけたりして、現地語の教科学習言語力を上げることができます。
娘は日本人永住家庭のカナダ生まれの子供(中学生)の英語のチューターをしましたが、すぐにその子の英語作文力は上がりました。早めに対策さえ立てれば心配ありません。
継続が難しい中学時代
海外で日本語教育を続ける上で最大の山場は中学時代です。
まず、現地校、日本語学校共にいっそう勉強内容が難しくなります。
子供達が通ったトロント補習校は中学部は国数社理の4教科あり、毎日宿題に追われる日々でした。我が家は宿題に優先順位をつけて、どうにか対応していました。
そして、なんといっても子供の反抗期があります。やる気のない子供に勉強をさせるのはほんとうにたいへん。
しかし、我が家の子供達は2人とも補習校を辞めたいと言ったことはありませんでした。特に勉強が嫌いな息子も私の迫力に圧倒されて補習校を辞めたいとは言い出せなかったようです。でも、陰では学校の先生やクラスメートに文句を言っていたようです。
9歳から15歳は、語彙力や作文力が着く「言語形成期後半」です。。
日本でなら中学を卒業したら新聞を読めますが、海外ではここで日本語教育を止めないことをお勧めします。海外ではまだまだ日本語力が弱いからです。でもここを踏ん張ると後が楽になりますよ。
高校でやっと楽になる
現地校での英仏2か国語教育と補習校での日本語教育を、勉強嫌いの息子にさせるのは本当に大変でした。
なぜなら。。。
① 成長して日本語の大事さに気づき宿題を自分からするようになる。
② 思考力が大人に近くなり自分の意見を持ち作文力が上がる。
③ 高校でやっと敬語が使えるようになる。
④ 頑張って自分に日本語力を着けてくれた親に感謝する。
どの言語でも作文力が低かった息子の書く力が着きだしたのも高校からでした。せっかく頑張ったのなら高校まで続けないと損です。
ただ、海外では高等部まである補習校が60校(文部科学省調べ)と少ないのがネックです。私は高校からの日本語力の伸びは大きいと確信しているので、文部科学省が増やす努力をしてくれたら良いのにと思います。
日本での留学や仕事で完成
海外での日本語教育は前進と後退の繰り返しです。
そして、海外ではどんなに頑張っても、日本語力は日本在住の子供に比べ平均して5年以上は遅れます。
そして、日本の大学に留学したり日本で(又は日本人と)仕事をして初めて日本語が完成します。
息子は高校卒業後、日本の病院で半年間ボランティアをしました。日本語ができることで、色々なことを医師や看護師の方々から教えてもらったそうです。
彼の将来の目標を決める上でもたいへん有意義な経験となりました。
まとめ:「続ける」というよりは「止めない」
海外でのバイリンガル子育てはバトルの連続です。環境とのバトル。制度とのバトル。教育費とのバトル。子供とのバトルなどなど。
でも、大変な中でも子供と日本語で会話でき、彼らに日本の文化を継承できることの喜びは代えがたいものがあります。
私は、「続けるというよりは止めない」気持ちで持続することをお勧めします。細くても止めなかったらどこかに通じていきますよ。
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