バイリンガル教育は十分な条件が揃わないとなかなか成功しません。止む無く諦めることは失敗ではないので後悔する必要はありません!
SNS上やブログで、バイリンガル教育を諦めたお母さんが失敗したと自分の責任のように感じていることがわかります。
バイリンガル教育、特に海外での継承日本語教育は、マイナーな言語のため、とても難しいのが現状です。
そのうえ、日本語学校がなかったり、方法が分からなかったり等で、条件が揃わないと、なかなか成功させるのが難しいのです。
バイリンガル教育を続けられない理由にはどんなものがあるのでしょうか。バイリンガル教育を諦めないといけなかったお母さんはどのように感じているのでしょうか。
カナダで子供たちに長年トリリンガル教育をしたカエデが紹介します。
この記事のおすすめ読者
- バイリンガル教育に興味がある。
- 海外で日本語教育をしている。
- 日本でおうち英語をしている。
- 国際結婚家庭。
- バイリンガル教育をやっていたが止めた。
バイリンガル教育を失敗したと親は責められる
「国際結婚だと子供は当然バイリンガルでしょ?」「海外暮らしなのになぜバイリンガルに育てないの?」という言葉にたいへん傷つくという親御さんが多いですね。
中には「日本語を話せないなんて子供がかわいそう」や、「日本のおじいちゃんやおばあちゃんがかわいそう」とまで言うらしいのです。(大きなお世話!)
日本人に責められて親は傷つく
どうも日本在住の親戚、または友人に責められるらしいのです。
私の日本の実家家族も、「母親が日本人なので日本語ができて当然」と考えているようです。
海外暮らしの経験のある人だと、海外でバイリンガルに育てるのがどれだけ大変か知ってるので、「なぜバイリンガルに育てないの?」とは言えません。
SNS上でバイリンガル教育を止めた経験を話している親御さんもいます。
例1:
こちらのアメリカ在住のもーちゃんさんは、日本語教師なので尚更「もったいない」と言われるらしいですね。
私は息子に障害があって、日本語教師でありながら、バイリンガル教育を諦めた人なんで、私が何言っても言い訳っぽくなっちゃうかなと思って、あまり口を出さないようにしてるんです。😅でも、まあ、ちょっとだけ口を出すなら、子供に日本語を教えるかどうかって、本当にその家庭が決めるべきことで、
例2:
こちらのアメリカ在住のえっちゃんさんは、海外で日本語を教える環境が何一つ揃わなかったと言っています。環境を整えるのが本当に難しいのです。
例3:
こちらのカナダ在住のお母さんは、お子さんが2歳まで言葉が出なかったことと、義両親のプレッシャーでスピーチセラピストに診せたら「英語だけにしてください。」と言われたようですね。(今では母語の日本語で子育てをしてはいけないと言うセラピストがいないことを祈ります。)☟
例4:
Erinaさんは、お子さんの現地語(英語)に遅れが見え、他の子供たちとの関係がぎくしゃくしたことで、日本語教育を保留にしたそうです。
バイリンガル教育は環境の賜物
バイリンガル教育は、環境がある程度整わないとなかなか成功しません。
移住したてで生活を立て直すのに大変だったり、仕事で忙しかったりなど、環境がなかなか整わない理由はいくらでもあります。
ただ、その間に子供はどんどん成長していってしまいます。
必要な環境とは
では、バイリンガル教育にはどのような環境が必要なのでしょうか。
なくても工夫でどうにかなる場合もありますが、以下の条件にいくつか当てはまらないと難しくなります。
海外で日本語とのバイリンガル教育に適した環境とは
1.親の1人または両親が日本人
2.日本語学校がある
3.通信教育や教材が使える
4.日本語教育に使える経済的な余裕がある・
5.子供の宿題を見る時間がある
6.日本に時々行くことができる
7.夫や義家族が協力的である。
8.親子関係が良好である
9.家の外で日本語を使う機会がある
バイリンガル教育に適した条件を挙げるとキリがありません。
しかし、全部ではなくともいくつかの環境が整わないとバイリンガル教育は成功しません。
親がバイリンガルでも教えない人もいる
親がバイリンガルでも敢えて子供をバイリンガルに育てない親もいます。
海外の例を紹介しましょう。カナダの「グローブアンドメール紙」に寄稿されたエッセイです。☟
「’I’m determined to become bilingual – but it’s okay that my kids are not’ (私はバイリンガルだけど子供はならなくてOK)」
カナダ人のワトソンさんという女性はライターで、一時高校時代にフランス語圏のモントリオールに住んだようです。
フランス語はネイティブレベルではないけれど話せるようで、現在も学習中です。
彼女は英語圏であるアルバータ州で子育てをしましたが、子供たちはフレンチイマージョン(カナダの英仏バイリンガル教育)には入れなかったそうです。
近くにフレンチイマージョンがなかったらしいのですが、あっても入れなかっただろうと言っています。
その理由は、彼女は大学で英語を教えているのですが、学生の英語が酷いらしいのです。
カナダで大事な英語を犠牲にしてまで、子供たちにフランス語を教える必要はないという意見です。
以下がその理由です。
「I was tempted to ask who had studied high school in French immersion, spending their days learning a second language while neglecting their first. I hope the number would have been high. Otherwise, our English-language schools are failing us.(私は学生たちに高校でフレンチイマージョンに行っていたのか聞いてみたかった。第2言語(フランス語)を勉強するために第1言語(英語)をおろそかにしたのですか?と。そのような生徒が多いことを願っていた。さもなければ(彼らの英語が酷いので)、カナダの英語教育は崩壊していると言えるだろう。)」
ただ、フランス語を勉強したから第1言語の英語がダメになるわけではありません。近年カナダ人の英語力が落ちてきているのは周知の事実で、複数言語教育のせいではありません。
海外で子供を日本語とのバイリンガルに育てたいと思う親ごさんは多いでしょう。しかし、バイリンガル教育について結構思い込みや誤解が多いことを知っていますか? 思い込みや誤解は、せっかくのバイリンガル教育なのに、方法を間[…]
バイリンガル教育は勧めないし励まさない
カエデは現在、リアルの知人友人にバイリンガル教育を勧めたり、弱気になっている親御さんを励ましたりしていません。教育とはとてもデリケートな問題だからです。
励ましは押し付けかもしれない
昔は、私自身が子供たちのバイリンガル・マルチリンガル教育真っ最中で、周りがどんどん辞めていく中で、仲間を失いたくないがためにバイリンガル子育て仲間を励ましていました。
今思うとこれも押し付けだったかもしれないと思います。
私が熱く語れば語るほど、彼女たちに引かれていたと思います。お母さんたちは辞める理由を探しているのに、私がその反対のことをしていたからです。
教育とは、皆それぞれ目指すところが違います。また、周りの子供たちに比べて遅れていると思っていると、それについて触れて欲しくないと思うでしょう。
リアルで自分と同じ教育目標を持つ仲間を見つけるのは、ほぼ不可能と思った方がよいでしょう。
カエデは、子供たちが成長した後、自分の持っている経験や知識を人に伝えるのは無理かもしれないと思いました。
それがブログやSNSを始めた理由です。
今は子供たちが勧めている
私はリアルの知人・友人に、子供をバイリンガルに育てることを勧めなくなりました。
そうすると今度は、成長したカエデの子供たちや夫が、子供をフランス語と英語や、日本語と英語のバイリンガルに育てたいという、カナダ人や日本人の親御さんに、こうすればいいと指南することがあります。
多分、子供たちは、自分がトリリンガルになったことが良いことであると自信があり、夫は子供をトリリンガルに育てた方法を教えてあげたい一心でだと思います。
そんな時私は心の中で、「止めておけばいいのに」と思っています。
彼らが熱心に語れば語るほど、聞いている人の顔色が変わっていくのが分かるからです。
どの国に住んでいても、どの言語でも、バイリンガル教育は本当に大変だからです。
バイリンガルになること以外にも大事なものがある
もしバイリンガル教育を途中で諦めることになっても、それは今はできる状態ではないということであり、失敗ではありません。
失敗ではなく選択
バイリンガル教育のブログを書き、Bilingual Zooというフォーラムを運営し、著書もあるアダム・ベックさんは広島に住み、日本人の奥さんと一緒に2人のお子さんをバイリンガルに育てています。
たくさんの人が、彼から子供をバイリンガルに育てる秘訣を教えてもらっています。
彼のブログの中に、
「This Is When You Should Give Up the Idea of Raising a Bilingual Child(バイリンガル教育を諦めるべき時)」というものがあります。
The only time you should give up the idea of raising a bilingual child is when it’s not truly important to you, when you honestly don’t feel that it’s worth the effort it demands…..,”
(バイリンガル教育を諦める時とは、それが本当に大事なことではなくなった時であり、努力が結果に見合わないと判断した時です。)
子供にとってこれほど辛い思いをしてバイリンガルになることよりも、もっと大事なことが出てきた時、それを優先するための「選択」をしたのです。
しかし、継承語学習を嫌がって辞めた子供が、大人になって親に文句を言う場面がたくさんあります。
「なぜ私が嫌がっても続けなかったのか」と。その時は、「今からでも遅くないよ」と言いましょう。
バイリンガルでなくても成功するので大丈夫
バイリンガルにならなくても、あなたのお子さんは立派に成功するので心配は要りません。
私の知人のお子さんたちも、教育熱心な親御さんの元で、バイリンガル教育以外に才能を開花させています。
音楽、スポーツ、勉強、アート等、子供の才能は無限であり、与えられた才能をおおいに伸ばせるのが子供時代です。
子供たちはとても忙しく、すべてのことに没頭できるわけではありません。その場合、子供が一番やりたいことをやらせてあげたいと親が思うのは当然です。
ただ、小さい頃に第2言語に触れさせておくと、成長してから再度始めた時のスピードが違います。
もしかしたら、子供がまた日本語を始めたいと思うかもしれません。
ですから、小さい間だけでもやってみる価値はあると思います。
まとめ:止めても大丈夫
価値とは人それぞれであり、子供にとって大事なことはバイリンガルになることだけではありません。
子供の為に、頑張り、悩み、そして決断をしたのです。
だから、親御さんは、自分を責める必要も、誰に謝る必要もありませんね。
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