幼稚園児連れの海外赴任は要注意!バイリンガルにしたいと焦るのは危険

海外赴任や移住などで幼稚園児を海外に連れ出す時は、子供の言葉の発達に十分注意しましょう。幼児は大事な母語がまだ確立していません。何歳から何歳までが危ないのでしょうか。

日本企業の海外活動に伴って、子供を連れて海外赴任する家族は多いですね。また近年はお子さんの教育のために海外移住するご家庭も増えてきました。

十分な準備期間もないまま新天地に出発する家族も多いと思います。特に駐在の場合、現地での子供の教育についてしっかりリサーチをする時間もないのではないでしょうか。

 

特に幼稚園児くらいの子供連れの海外赴任や移住時には、言語の面で十分気をつけてほしいことがあります!

 

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この記事のおすすめ読者

  • 駐在が決まった方
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【幼稚園児連れの海外赴任】幼児期は言葉の土台作り

幼年期の子供は母語を通して言葉の土台を作っている年代です。では、何歳から何歳までが最も大事な年齢なのでしょうか。

3歳から8歳まではとても大事

子連れの海外赴任家族や移住家族は、2歳くらいまでなら自宅で保育すると思いますが、3~4歳くらいだと現地の保育園や幼稚園に入れようと思うご家庭も多いのではないでしょうか。

子供が国境を超える時、ことばの発達に関して最も気をつけなければいけない年齢は、3歳から8歳です。

 

現地語が英語であれば、「日英語のバイリンガルにするチャンス!」と思われるかもしれません。

でも、気をつけてください!いきなり現地の学校へ入れると、子供の言語や社会性の形成にとって重大な問題が起きるかもしれません。

 

この年齢は、母語(最初に覚えたことばで最も使いやすいことば)の基礎の形成途中で、その子の一生を左右する言語形成にとって、とても大事な時期なのです。

カエデ
幼児期は母文化や社会性も身に着ける年代。

 

言葉が通じないと遊んでくれない

幼児の遊びに言葉はいらないと思っていませんか? 実は彼らもちゃんと言葉を使って遊んでいます。

 

現地語の基礎のない幼児を海外に連れていき、いきなり現地の保育園や幼稚園に入れても、言葉が通じないので誰も遊びに誘ってくれません

言葉の分からない子といっしょに遊んでも楽しくないからです。遊び相手のいない子は1人遊びをするか、教室の隅で大人しくしているかもしれません。

 

カエデは、フランス語のために、子供たちをモントリオールのサマーキャンプに入れました。わが家の子供たちは小学生でしたが、必死にフランス語を使ってフランス語ネイティブの子供たちと遊びました。中には、親が無理に入れたのか、英語しか話せない子供がいましたが、かわいそうに、その子は遊んでもらえなかったそうです。

 

カエデ
子供は言葉の通じる子と遊びます。

 

幼稚園の先生がどうにかしてくれるとはかぎらない

現地の保育園や幼稚園の先生も、園児が大人しくして問題を起こさなければ、それほど気にかけてくれないかもしれません

活発で外交的な子」は外国語の習得には有利です。子供の性格は言葉の習得に大きく影響します。

幼児にとって遊べないという状況は大変苦しく、すべての言葉の基礎となる「大事な母語や母文化が育たず、社会性を身に着けるチャンスも失っている」ことになります。

 

【幼稚園児連れの海外赴任】外国語漬けにすると子供は壊れる

 

幼稚園くらいの子供を、言葉のわからない状況に長時間入れておくと、子供は壊れていきます。

とても怖いサブマージョン

外国語の基礎のない幼児をいきなり外国語の幼稚園や学校に入れる状態のことを「サブマージョン」といいます。

「サブマージ」とは「沈む」という意味で、外国語の海の中で泳ぎ方も知らずに沈みながらもがいている状態です。

サブマージョンの状態で外国語の海を泳げるようになる幼い子供は20%くらいだそうです。

 

母語の基礎もできていない幼児は、未知の環境に放り込まれた自分の状況を理解できず、やっと覚えかけた日本語をもぎ取られ、他者とのコミュニケーションの方法もわかりません

そしてひどくすると、日本語でもない現地語でもない言葉を発しながら、虚ろな目で教室内をさまよう「ボウフラ現象」を起こすかもしれません。

子供が壊れていくのです。

 

母語がないと言葉が育たない

このような状況が続くと母語が発達せず、6歳頃までに完成すべき母語習得のチャンスを逃し、いちばん理解できて使い心地が良いはずの言葉を持たなくなります

これはたいへん怖いことだと思います。

抽象的な概念を深く理解できる母語を一生涯持たないということは、母文化や社会性の形成、学習にマイナスの影響があるからです。

 

カエデ
急激に言葉が違う環境は幼児には危険!

 

幼児を海外に連れていく人は早津 邑子さんの「異文化に暮らす子どもたち」を読むことをお勧めします。幼児を、理解できない言葉の環境に放り込むことの弊害について書かれています。私はこの本を読んで、異言語、異文化社会に突然入れられてパニックになっている幼児達の恐怖を思うと涙が出そうでした。

 

【幼稚園児連れの海外赴任】言語形成期を理解する

 

子供は生まれてから大人になるまで、いろいろな段階を踏んで言葉を習得します。また言葉と共に自分の芯となる母文化も身に着けます。

言語形成期前半

0歳から8歳までは言語形成期前半で、子供にとっても最も大事な母語の文法の基礎ができます。会話言語が伸びる年齢です。

 

  • 0歳から1歳までは周りの会話をじっと聞いている年齢です。
  • 言葉が出始めると家族と会話し、3歳ぐらいから遊び仲間と言葉を使って遊びます。
  • 4~5歳で幼稚園や学校に上がり、だんだんと言葉を使ってのコミュニケーション力が着いていきます。
  • そして8~9歳までには読み書きの初歩も学びます。ここまでくると初めて母語が完成します。

 

カエデ
母語がしっかりしてこそ第2、第3の言語を習得できます

 

言語形成期後半

9歳から15歳までは言語形成期後半で、語彙力や表現力が着きます。9歳以降は抽象的な思考も発達し、作文力が着いていきます。学習言語が伸びる年齢です。

日本語には漢字や熟語、話し言葉とは違う書き言葉があり習得に時間がかかります。日本語の言語形成期終了は15歳ごろです。中学を卒業してやっと日本語の新聞が自由に読めます。

しかし、これは日本で育つ子供の場合です。海外での日本語習得はたいへん時間がかかります。

海外で子供をバイリンガルに育てる場合、日本語の習得には少なくとも20歳までかかる」と長期的に考えたほうがよいでしょう。

カエデの子供は成人していますが、今でも日本語は学習中です。言葉は学習を続けないと後退します。

 

海外赴任に最適な年齢は9歳

言葉の習得には長い時間が必要です。

「子供は外国に住んだら言葉がすぐに話せるようになる」は迷信です。

現地語が無理なく話せるようになるには2年かかります

 

海外移住や駐在で子供を外国に連れて出る場合、バイリンガルにするのに最も適してるのは、母語の基礎ができた9歳です。

小学校で書く力が着いた年齢の方が外国語の習得は速くなります。この年齢なら、母語の力をバネに外国語を習得できるからです。

 

10歳を過ぎると外国語の習得能力は落ちる

9歳までなら現地校の勉強もそれほど難しくはなっていませんが、9歳を境に勉強も難しくなります。

 

10歳を過ぎると、子供が持つ言語の習得能力も落ちていきます。子供の「黄金の耳」も10歳を境に外国語の音を聞き分け難くなります。

 

また、9歳以降ですと、言葉を覚えながら同年齢の子供達に勉強が追いつくのに5年から7年かかります。そんなにかかるのは、目標とする周りの学習レベルがどんどん上に動いていくからです。

 

7歳くらいまでに幼くして海外に出る場合は、母語の基礎が育っていないので、学習が追いつくのに10年もかかる可能性があります。言葉そのものの概念の獲得と、2つの言葉を同時に習得していくためです。

ただし、時間がかかっても、母語を守りながら外国語を習得していくことで完璧なバイリンガルに育っていきます。

 

カエデ
言語形成期を理解することがバイリンガル教育の成功につながります。

 

【幼稚園児連れの海外赴任】海外でも母語の確立が最優先

 

わが家の子供達は日英仏3か国語を話します。

カナダで日本語保育園、その後は英仏語で学ぶフレンチイマージョンというカナダのバイリンガルプログラムと、週末の日本語補習校との組み合わせで3か国語を習得しました。

 

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バランスの取れた言語環境

カエデの子供達の母語は日本語と英語両方です。

カナダで周りの英語環境に負けないようにと日本語保育園に入れたので、保育園では毎日日本語で話していました。

 

保育園では日本語、家に帰れば父親とは英語、私とは日本語で話し、1歩外に出れば英語という環境でした。とてもバランスが取れていたと思います。

この時に日本語と英語の基礎ができました。母語は1つだけとは限らず、国際結婚家庭では接触量が十分あれば複数の母語を持てます。

カエデ
大事なのは言葉の質と量とバランス

 

海外に出る場合、最も大事なことは、最低1つの完璧な母語を最優先で身に着けさせることです

日本にいれば子供は自然と日本語が母語になりますが、海外に出る場合は、日本語を母語とさせたければ、日本語の幼稚園や保育園に入れるなどして日本語の基礎をしっかり身に着けさせます。

 

それと並行して現地語に徐々に慣らしていくと良いと思います。いきなり救命胴衣もなく外国語の海に放り込むことは禁物です。

母語(日本語)の基礎が8歳までに完成し読み書きまでできていれば、海外に出ても母語の文法や言葉の概念、作文力を新しい言語の習得に応用できます。

 

これを「認知力の転移」と呼びます。そして、第2言語を話せる子供は、第3、第4の言語も比較的楽に習得できます。

 

カエデ
母語は学習や外国語習得の基礎です。

 

【幼稚園児連れの海外赴任】幼い子供は日本語をすぐに忘れる

 

7~8歳未満の、まだ日本語の基礎が完成していない幼児児童が海外に出る場合、現地語にも慣れだんだん話すのが楽になると、

一気に現地語が優勢になり強い言葉の入れ替わりが起こります。

 

そして下手をすると日本語そのものが消失していきます。これは両親とも日本人の子供にも起こり得ることです。

それほど子供にとって現地語の威力はすさまじいのです。

 

私の子供達と日本語保育園で一緒だった国際結婚家庭や日系家庭の子供達は、卒園して現地の幼稚園や小学校に上がり日本語の接触量が減るとあっという間に日本語が弱くなりました。

保育園時代は毎日日本語で話していたのに、まったく日本語が出なくなった子供もいます。

カエデ
幼児は日本語に触れなくなったらあっという間です!

 

8歳まで十分に日本語を保持するとその後はどうにか日本語が残りますが、それでも使わなければどんどん忘れていきます。

また、補習校や日本語学校に入れなければ、年齢相応の使える日本語(学習言語)を親だけで教えるのには、相当な努力が必要になります。

「子供は言葉を覚えるのも速いですが、忘れるものとても速い」ことを忘れないでください。

 

まとめ

 

言語形成期前半途中の幼児が海を渡る時に、次の2点はとても大事なことだとお分かりいただけるでしょうか?

1)いきなり現地語だけの環境に長時間入れない 

2)母語(日本語)の基礎を6歳までに固める

 

深く思考できる言葉を大人になっても持てないということは、学習にもつまづき大変辛い一生を過ごさないといけなくなります。

幼稚園時代の言語形成がその子供の将来を左右します。海外に幼児を連れていく場合、母語である日本語が育つように十分接触量を維持し、それと並行して現地語に慣れさせていくという方法が最も良いでしょう。

 

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