海外で子供を日本語とのバイリンガルに育てたいと思う親ごさんは多いでしょう。しかし、バイリンガル教育について結構思い込みや誤解が多いことを知っていますか?
思い込みや誤解は、せっかくのバイリンガル教育なのに、方法を間違い成功率を下げます。
この記事では、これまで当然のように言われてきたバイリンガル教育の「9つの思い込み」について、2人の子供を日英仏語の高度トリリガルに育てたカエデが解説します。
これできっと誤解も解けるはず!
この記事のおすすめ読者
- 海外で子供にバイリンガル教育をしている人
- 海外駐在中、または予定のある人
- 国際結婚家庭
- バイリンガル教育に興味のある人
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その1:「ハーフの子供は自然にバイリンガルになる」という誤解
海外では国際結婚ハーフの子供の母親が日本人、父親が非日本人の組み合わせが圧倒的に多いです。
そして、自分達親が子供にそれぞれの母国語で話しかけていたら自然とバイリンガルになるだろうと思ってられる方が多いようです。
でも、親の言葉を子供が自然に話すのは保育園、幼稚園や小学校に上がる前まで。
バイリンガルにしたければ、日本語学校へ行かせたり、日本語での会話を続けるなど、親が頑張るしかありません。
わが家の子供たちは日英仏語のトリリンガルで、日本語は自由に話します。
私の日本の家族は、子供達と日本語で普通にコミュニケーションが取れることを、母親が日本人だから当然のことと思っています。
陰でどれほどの親子の努力があったかは知らないでしょう。
その2:「バイリンガルの子供は言葉が遅くなる」という誤解
海外でもあえて日本語とのバイリンガル教育をせず、現地語だけで子育てをする日本人家庭や国際結婚家庭はたくさんあります。
2つ以上の言葉を同時に学習すると大事な現地語の発達が遅れるという考えがあるようです。
カエデの子供たちはは生まれたときから日英2か国語、幼稚園からは日英仏の3か国語を使っています。
娘はどの言葉も順調に育ち、言葉が遅れたということはありませんでした。
ただ、息子は3歳の誕生日まで文章が出ず私もやきもきしました。
しかし、日本語を止めようとは思いませんでした。その後、どの言語も発達していきました。
息子の言葉の遅れは、バイリンガル・マルチリンガル教育の影響というよりも、息子の特性でした。
言語全般的に成長がゆっくりで、話すことが億劫だったようです。
シーソーを繰り返して、言語はお互い強め合いながら伸びていきます。あせりは禁物です。
バイリンガルやマルチリンガルの子供は、メタ認知力が高く、相手の気持を推し量る能力に長け、異文化や外国人を受け容れる寛容性があるというメリットを持っています。
その3:「子供は外国語を簡単に覚える」という誤解
海外赴任する家族に対して見送る人がよく言うのが、「海外に出れば子供は外国語をすぐに覚えるから大丈夫。」というもの。
このような間違った言葉はかけないでもらいたいものです。
「家でも英語で話してください。」と無責任なことを言う教師もまだいるようです。
「環境」が整っていれば子供は大人よりは楽に外国語を話せるようになりますが、それでもある程度の年数が必要です。
その間、子供は理解できない言葉に囲まれることになりストレスは相当なもの。
学習の停滞が起きないように日本語での学習サポートと、日本語で友達と遊べてストレスが発散できる環境が必要になります。
現地語を全く話せない状態で海外に連れていかれ、いきなり保育園や幼稚園、現地の小学校に入れられると子供はもう大パニックです。この状態をバイリンガル教育の言葉で「サブマージョン」といいます。これは、外国語の海の中で泳ぎ方を知らず、沈みながらもがいている状態のことです。
現地校のクラスメートも、言葉が通じないと楽しくないからいっしょに遊んでくれません。そうなると、友達もできず、先生の言っていることもわからず、授業も理解できず、子供にとって孤立したたいへん辛い状態になります。
サブマージョン状態でも必死に言葉を鷲掴み(わしづかみ)して自分のものにしていけるのは、性格がとても外交的な子供でしょう。
これが特に幼児、まだ保育園や幼稚園に通う年齢だと言葉そのものの発達がストップするので、大事な母語が育たず、その後の言語形成に大きなマイナスとなり、子供の社会性の形成にもゆがみが出るかもしれません。
幼児は、海外でも日本語保育園や幼稚園に入れて母語である日本語を確立させながら、現地語に少しづつ慣れさせるほうがよいでしょう。現地語が英語の場合、日英語バイリンガルにするチャンスと思われるかもしれませんが、いきなり現地語だけの環境に長時間入れると子供が壊れるかもしれません。
早津 邑子さんの「異文化に暮らす子どもたち」という著書には、幼児が言葉も分からないまま海外で現地の幼稚園に入れられ、言葉の成長を止められた痛ましい姿について書かれています。幼児は自分の置かれた状態を言葉で表せません。幼児を連れた海外赴任予定の親ごさんには是非読んでもらいたいと思います。
その4:「言語には向き不向きがある」という誤解
バイリンガル教育を止める時に親ごさんがよく言われるのが、「言葉の習得には向き不向きがある」という言葉です。
上記で述べたように、カエデの息子は言葉が遅く、言葉らしい言葉が出だしたのが3歳の誕生日前からでした。
その後、英語も伸びていきましたが、全体的に息子の言葉の発達はどの言語でもゆっくりでした。
私たち親はたいへん心配しましたが、息子は他の子供に比べてゆっくり成長していくタイプだと理解したので、彼の言葉の成長を待つことにしました。
じっくりゆっくり、息子の成長に合わせて3言語を伸ばしていきました。
今では息子は、どの言語でも読み書きまでできます。(もちろん言語によって強い弱いはありますが、それがマルチリンガル話者です。)
子供の言葉の習得には、「すぐに身に着く子」と「時間のかかる子」や「得意な子」と「苦手な子」があるだけだと考えます。
ただ、親が待っていられずバイリンガル教育を諦める時に、「外国語の習得には向き不向きがある」と理由付けをする傾向があります。
息子は「とても時間のかかる子」でしたが、ただただ止めなかったのでマルチリンガルになることができました。
その5:「日本語は将来また勉強すればいい」という誤解
海外では、バイリンガル教育のために、週日は現地校、土曜日は日本語学校や補習校に子供を通わせて頑張る永住者や国際結婚家庭がたくさんあります。
そのうちに子供の第1言語はやはり現地語になっていき、子供にとって日本語を話すことがだんだん楽でなくなっていきます。
また、現地校の友達が休んでいる土曜日に自分だけ学校へ行くことですごく損をしている気分になり、小学校高学年になると日本語学校を嫌がるようになります。そして、土曜日の朝には日本語学校へ行く行かないで親子のバトルになります。
そこで親も疲れてしまい、日本語教育を道半ばで止めていく親子がたくさんいます。その時に親ごさんが、「将来日本語を習いたくなったらまた勉強すればいい。」とよくおっしゃいます。
でも、一旦日本語から遠ざかると一層日本語が使いづらくなり、子供が日本語を再び勉強する確率は大変低くなります。
できれば細くても良いので、日本語教育を途切れさせない方法を考えたほうが良いでしょう。
その6:「日本語は親が家で教えられる」という誤解
海外の地方都市に住んでいて日本語学校も通学圏内にない場合、日本人の親が子供の日本語教師にならないといけなくなります。
中には家庭で日本語を教えているスーパーママもいますが、
親子だとどうしても感情のぶつかり合いになります。
親は子供の日本語学習が進まないことにに苛立ち、子供も親に反抗し、その悪循環で子供が日本語や日本さえも嫌いになってしまうかもしれません。
自分は人並み以上に忍耐強いという自信がなければ、なるべく第3者も交えた日本語学習を取り入れると良いと思います。
オンライン学習を使ったり、同じ地域に住む日本人と学習グループを作ったりなど、仲間を作ることをお勧めします。
その7:「日本語学校に入れたら安心」という誤解
海外の国際結婚家庭で、家庭ではそれほど日本語を使わず、学齢期になってから日本語をあまり理解しない子供を、日本語学校や補習校に入れる親ごさんがいます。
日本語学校に入れたら先生がどうにかしてくれると考えるようです。
私の子供達の世代まではそれでも学校に入れていたようなのですが、今後は日本語学校に入ることも難しくなるかもしれません。
というのも、近年国際結婚家庭が増え、日本語学校や補習校に子供を入れる家庭も増え、日本語を理解しない子供が増えてきたからです。
最低限先生の指示が理解できるよう、入園や入学時に日本語のテストをする学校も出てきています。
また、日本語学校や補習校に入れたとしても、子供の日本語の宿題を手伝うまでは手が回らない家庭もあります。
家庭学習がないと日本語が伸び悩みます。
その8:「バイリンガル教育は中学までで十分」という誤解
海外でも、日本語は中学卒業くらいまで勉強したら使えるようになるだろう、と思っている親ごさんは多いと思います。
日本では、中学校を卒業したら、たいていの子供達は新聞が読めているからです。
ですが、
カナダの日本語学校で土曜日に3時間、10年間日本語を勉強した高校生は、平均して、読みは小学4年生、作文力は小学2~3年生、書ける漢字は小学2年生レベルの子供が多いようです。
そのうえ、海外の永住や国際結婚家庭の子供で、15歳まで日本語学校を続ける子供はたいへん少ないのが現状で、学習年数が少ないと到達レベルはもっと下がります。
このように、海外に暮らす子供達の日本語のレベルは、
日本在住の子供たちに比べると5年以上の差があり、使える日本語にするためには少なくとも20歳くらいまでの学習が必要です。
その9:「日本語学校、子供が辞めたいと言うから」という誤解
子供が日本語学校を辞めたいと主張し、子供の意思を尊重して、「後で文句を言わないように。」と念押しして辞めさせたとしても、
成長してから、「なんで辞めさせた?」と文句を言われるかもしれません。
これは世界共通のようで、英語で検索しても、
子供が嫌がるので母語保持教育を止めた親のことを非難する(成長した)子供はたくさんいます。
子供は楽なほうに流れる傾向があり、私の子供時代を考えても、長期的な展望など持っていませんでした。
子供が日本語学校を辞めたいと言ったときは、
長い視野で考えることのできる親ごさんが、子供とじっくり話し合ったほうが良いでしょう。
まとめ:あせりは禁物
このように、バイリンガル教育には誤解や思い込みが多いことがお分かりいただけたでしょうか。
私もバイリンガル教育を系統立てて勉強するまではそのような言葉を信じていました。
子供を外国語の海の中で溺れさせたくなければ、また、子供にバイリンガルになってもらいたければ、まず親ごさんがバイリンガル教育を理解することが大事です。
時間をかければ子供には潜在的に言語を習得する力があります。大事なのは子供の能力を信じてあせらない事ですね。
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